だいたい32×32で、麻生政権を振り返る。

麻生政権 2008年9月24日から2009年9月16日をドット絵で振り返っています。

20081121@やるべきことはたくさんある



中川昭一 財務相・内閣特命担当相(金融)外国特派員協会での講演
http://www.tv.janjan.jp/0811/0811210018/1.php
11月21日、中川昭一財務大臣内閣府特命担当大臣(金融)は日本外国特派員協会(東京・千代田区)で会見し、G20金融サミットでの日本の成果などについて述べた。
Shoichi Nakagawa, Minister of Finance, Minister of State for Financial Services,spoke about “G20”, at the Foreign Correspondents' Club of Japan (FCCJ) in Tokyo,November 21.

やるべきことはたくさんあると思います。

宣言文は皆さん既にお読みになっているという前提でお話をさせていただきたいと思いますが、先ほども申し上げましたように幾つかの先進国は、これは「反省」というところからスタートしているわけであります。

そして5つの行動計画というものを決めたわけでございます。

これは若干抽象的ではありますけれども、「透明性及び説明責任の強化」「健全な規制の拡大」「金融市場における公正性の促進」「国際連携の強化」、そして「国際金融機関の改革」というこの五点でありますが、わかったようなわかんないような、まあ極めて高邁かつ抽象的で、具体性がない、ということで全ページ10ページにわたる、この閣僚宣言と行動計画であります。

先月の我々のG7はたった1ページで5項目を並べました。これがある意味では非常にわかりやすいというふうに評価もされました。今回は10ページまで広がってしまった。これをもって、いかに会議が複雑であったかということのメッセージとなったのかもしれませんし、ひょっとしたら10ページにすることによって焦点がボケてしまったのか、或いはボカしてしまったのかという御批判もいただくのかもしれません。

さすがあのサルコジ大統領が「しかし合意されたことは四つあるよね」という提案を会議の際に提案されました。

ひとつは、この危機をみんなで乗りこえようという決意。これはコンセンサスとして共有できるよね。
ふたつめ、コントロールされた市場というものをこれから構築していくことが必要ですよと。これも異議なしであります。
3点目、途上国に対してもっともっとドアを開いていこうじゃないか。これはまあ、多少、開き方で温度差があるのかもしれませんけど、でもこれも誰も反対する人はおりません。
4点目、保護主義孤立主義・自国通貨の切り下げ競争、これは絶対に阻止しよう。これももちろん誰も反対するものでもありません。これを続ければ80年前の世界に戻ってしまうからであります。

このサルコジさんの提案に対して、最後、ブッシュ大統領がこの4つの、このサルコジさんからの提案というものをみんなでアジェンダとしてですね、確認しあおうよということで会議が終わったわけであります。これはもう少しわかりやすい提案でございました。

しかし、最も具体的で、そして、わかりやすく、効果のある提案をしたのは、我が麻生総理大臣でございました。理由は3つか4つあると思います。

一つは、麻生さんの性格であります。
はっきりモノを言わなきゃ、もう気がすまない、白か黒かをできるだけはっきりしたい、という麻生さんの性格が、この国際会議では極めて効果を発揮を致しました。思わず、「イイ性格。会議向きでよかったですねぇ」と申しあげたら、「生意気なことを言うな」と言って、怒られました。あ、これ、カメラ映ってるんですね……。

ふたつめ、日本は厳しい経験を10数年前にした、ということであります。そのとき、麻生さんは1枚のグラフを皆さんに差しあげました。
80年代から現在にいたるまでのGDP、それから住宅着工件数、GDPは実質と名目と両方並べてありますけれども。それから住宅着工、失礼、不動産価格ですね、全国の平均の不動産価格、これを皆さんにお配りをしました。
1990年、ピークはそのちょっと前なんですけども、これを不動産価格を100とすると、2000年のはじめは日本の商業用不動産は13まで落ちたわけであります。つまり87%下落をした、という図であります。

しかし、あ、そしてですね、そして、その間、日本は約10年のこのバブル崩壊後のこの日本が失われた国富は約 1500兆円、GDPの3倍という数字をあげられました。それから処理した不良債権額、これはまあ金融機関だけでなく、一般、普通の会社の不良債権も含めて100兆円でございました。100兆円分不良債権処理をし、1500兆円の国富を失って、地価が約9割下がって、しかしGDPはほとんど500兆円を一度も下らずに少しずつでもあっても上昇し続けた。これはある意味では奇跡であります。脅威であります。

ご承知のように、1929年から1945年までの間のアメリカ合衆国のあの10月29日ですか4日ですか、あの10年間、或いは10数年の間にアメリカはGDPが半分以下になりました。失業率が最高25%になったわけでございます。日本は先ほど申し上げたようにGDPは上昇こそすれ、大きな下降は一度もなかったわけでありますし、失業率もこれからどうなるかわかりませんけれども、25%なんていう失業率は我々には考えられないわけでございます。そういった日本の経験を麻生総理が図を使いながら説明したわけでございます。

処方箋は4つある。

1つは不良債権を早くオフバランス化すること、オフバランス化することは、まずはオンバランスにならないといけないということであります。つまりバランスシートに何がのってるかのっていないかをはっきりとまずさせないといけないということであります。麻生さんはそこまでは説明されませんでしたけども、補足いたしますと、一体自分のところに健全・不良含めてどれだけの債権があるのかということをまずしっかりと把握をしなければいけない。

そうしないとオンバランスもオフバランスもありえないわけでありまして、そういう意味で日本の場合には徹底的に、まぁ完全かどうかは別にしてですね、それぞれのバランスシートを徹底的に調べた。そしてそれぞれのバランスシートを明らかにしてですね、そして切り離すべき不良債権は、あるいは国が買い、あるいはこれはもう潰しちゃってですね、ともかくオフバランス化したわけであります。

どうもアメリカの今の現状を見ていると、一生懸命オフバランス化をしようと思って、まぁまた最近それをやめたという政府の御発言もあるようでありますけども、いったい、どこまでがオフバランス化できるのか、できないのかと。つまりどこまでがオンバランスでオフバランスなのかというのが、例のあのサブプライムローン問題のときのSIVストラクチャード・インベストメント・ビークルってゆうんですか? あのSIVのとき、あれ最初はオフバランスの債権であったわけでありますけども、あれをなんか、入れたんだか入れてないんだかわかんないという状況のままで不良債権を処理をするのは、これは無理であります。

2点目が、インターバンク、或いは市中の資金の流動性の確保であります。

これはもう既に各国ともやっているわけでありますけれども、これがまず大前提でなければならないということは、言うまでもありません。現在日本もだいぶ経済の状況が悪くなってきて、どうもその流動性にちょっと心配な面が出てきてるという人がもうおられますけども、とにかく流動性の供給というものを充分すぎるほどやっていかなければならないということであります。

3つ目が、資本注入であります。これをいつのタイミングでどういうふうにやるか、これは非常に難しい。

アメリカでもこの前一度下院で否決されまして、これは我々の経験から言ってよくわかります。今まで儲けていた、そして今でも大金持ちの金融機関になんで俺たちの税金を使うんだという議論が一つと、万が一損したときにその尻ぬぐいを国民が背負うのかという問題が一つと、この二つの理由を中心にしてですね、資本注入というのは政治的に非常に難しいわけであります。

しかしこれもですね、こうゆう悪性デフレ、悪性不良債権状況の中では、我々の経験から言えば、必ずやらなければいけない問題だろうと思っております。我々、僕らもずいぶん経験しました。何回も何回も資本注入をやり、そしてちょっと景気がよくなると財政再建をやってはまた元に戻りといったことを3回くらい、10数年の間にくりかえしたわけでありまして、徹底的にこの4つの政策をやっていかなければ、なりません。

そして4つ目がですね、まあこれは峠を過ぎたあとの話だと思いますけれども、やはり残すべきものは残していかなければなりませんから、これは官民あげて残っていけるであろう企業あるいは債権を再生をさせる。

日本で言いますと債権再生機構というのがございましたけれども、あれも紆余曲折、似たようなものがいくつかできて、最終的にあの再生機構というものになっていったわけでありますけれども、こういった、このリスタートに向かってのですね、準備をしていくということも、必要だと思っています。

こういった流動性の確保、オフバランス化、資本注入、そして産業再生。この4つが我々のやった必要な対策であり、そのために100兆円をロスし、1500兆円が失われたということでありますけれども、しかし、どこの国にも迷惑をかけることなく日本は国民の力だけでやり遂げたと、いうことを総理はG20の首脳に発表したわけであります。

ひるがえって、今回のこの金融危機、きっかけは、やはりアメリカの状況にある。多大な債務を大量に世界中にバラまきながら、しかしお金だけがどんどん流入してくることによって、国内経済は、まあ消費消費と言えば、非常に経済がいいときにはいいのかもしれませんけれども、過剰消費、あるいはまた根っこの資産に基づかないような消費、あるいは浪費、こういったものが今回のアメリカ経済の大きな問題のひとつであるとはっきりとあの場で申しあげました。

もうひとつは、グローバル・インバランスという問題を総理は仰いました。

あまりにも貿易収支が悪い国と、あまりにも貿易収支がいい国と、どちらもこれはあまり正常ではない、ということであります。これについてはこの言葉を入れるか入れないかで、つまり、インバランスを入れるか入れないかで、宣言文に入れるか入れないかで、中国がたいへん反対を致しました。中国と書いてないのに、俺のことだろう、だから反対、というですね、かなりあの、先を考えた行動であったようでありますけれども、とにかくインバランスという言葉を入れるか入れないかで、10対19で会議の直前までモメましたけれども、宣言文には入っておりません。似たような言葉は入っておりますけれども、宣言文には入っておりません。

ただし、麻生総理は自分の言葉としてグローバル・インバランスはよくない、ということをはっきりと申しあげました。これは具体的にはアメリカと中国を私は指していると、私は、理解をしているわけでございます。

したがってこういう状況になったときには、やはり外需に頼ってる国はより内需を充実させていく、そしてアメリカのように過剰に消費をして、しかもその帳尻を外国からの資金でもって合わせようとするような国は、なんといってもそこは、節度ある経済運営をして、文字通りバランスを取っていくようにしていかなければならない。まあたいへん失礼ですけれども、名指しでアメリカに対して、まあアドバイスといいましょうか、問題点を指摘し、その上で、今後も変わるべき基軸通貨がない以上、アメリカのドルを基軸通貨として位置づけて、そして、みんなで守っていこうじゃないか、という提案をしたわけであります。

じゃ日本は何をするのか。もちろん、財政出動、第1次・第2次補正の話も致しました。今まで採ってきたことも、今後採ることも言いました。そして、国際貢献としては、IMFに対しての増資、倍額増資の提案、しかしこれは時間がかかります。お互いの権利関係にも影響してまいります。したがって即効性のあるものとしてはIMFが緊急融資に対応できるための資金が、だんだん、すでにもうここ数ヶ月の間に何カ国かに出動しておりますんで、枯渇する可能性が出てきたんで、日本としては1000億ドル融資を致します。IMFに対して融資を致します。何か日本だけみたいに言われておりますけれども、どうぞこの主旨に賛同する国々は参加をして下さい。

逆に、日本一国だけが出すというのも、ちょっと、その……シャイな日本人としては目立ちすぎだなあと、そういうふうに思う具合でありまして。そういう余力があって、このIMFを通じた世界支援というものに賛同する国があれば、どうぞ参加をして下さいということも、言っております。まあ一部、昨日一昨日の報道によると、ある国が10億ドルほど出すとか出さないとかいう報道もあるようでございます。

それからもうひとつが、これは私のまあ友人であります、ロバート・ゼーリックさん、世銀のところのIFC、ここに対して、日本がJBICを通じて20億ドルを提供してIFC、それから日本のJBICが共同で途上国の金融機関に直接資金供給をしようということを合意を致しました。私とゼービックさんとの間で合意を致しました。これもゼービックさんからも大変な評価をいただき、さっそくこれを期待している国々が複数出てきたところでございます。そして世界の地域金融機関、米州開発銀行、アフリカ開発銀行、欧州復興銀行、アジア開発銀行、とりわけ我ら日本においてはアジア開発銀行がかなり資金がタイトになってきておりますから、これに対して日本としては2倍から3倍に増資するための用意があります。

そういうところも申し上げたところでございます。そして、IMFとさっき申し上げましたけれども、10年前のアジア通貨危機というのは、そのときに大変な通過危機にあってそのときIMFが出動してきた国々ははっきり言ってIMFに対しては恨みをもっているわけでございます。

このことはIMFの専務自身もご存知でございまして、どう見ても我々が今から昔と同じようにどこどこ行っても拒絶されるだけだから、自分自身も変わらなければならないし、もっと柔軟に、積極的に、そして相手の立場にたって、モデレートにですね、その支援ができるように自分たちも変わっていくんだということを言っておられました。

そのうえでの1000億円の日本からの拠出でございますが、それとならんでアジア開発銀行というものもあるわけでありますし、特にアジアにおいてはあの通貨危機の経験のあと、チェンマイ・イニシアチブということで、参加国がバイでお互い、通貨をスワップ、融通しあうというシステムができあがっておりますが、これを更に充実させまして、バイだけではなくて、マルチでですね、みんなでこれを活用できるようにしようという提案も麻生総理からさせてもらいました。

以上が麻生総理からの提案でございます。

さっき申し上げたように、順番がブラジル、中国と向うかわりでぐるーっときて、最後、いちばん最後が麻生イニシアチブだったわけでございます。だからということでは決してございません。終わったあと、大きな拍手とみんなが寄ってきて「お前の話がいちばん印象的だった」。これは決して順番が最後だからではないと私は確信をしております。具体性があったからであります。さっき申し上げたように南アフリカが直接名指しで日本に感謝をするという言葉も戴きました。

さっそく我々はこれを実行して、もうこれ以上金融が悪くなることはもう想像したくもありませんけれども、しかし、またこの数日世界のいろんなマーケットの数字や或いはまたいろんな経済実態、日本も或いはヨーロッパも、そしてアメリカも、私はあのアメリカで一番ショックだったのはアメリカでトップを争う家電メーカーが潰れてしまったということに、大変な私は今回の経済危機の根の深さを感じているわけでございますけれども、とにかくどっかの国が困ったらそれは対岸の火事ではなくて、皆が廻りまわってその悪影響を受けるんだということでありますから、皆で抜けがけすることなく、たとえば通貨の切り下げを自分だけでやるとかですね、そんなようなことをすることなく、皆で手をとって立ちむかっていかないと。

なんといっても世界のGDPが60兆ドルと言われているときに、このいわゆるデリバティブ商品がその3倍も4倍もある、200兆ドルもある。200兆ドルというとですね、これは英語の方にはわかりにくいでしょうけれども、2京円という、円でいうと2京円という、私生まれてはじめてその京という数字を教科書以外で使うという体験をしはじめるようになってきたわけでありますけれども、これだけ巨額のお金が世界を今揺るがしているという状況でありますから、日本だけでもアメリカだけでも何もできません。皆で協力しあってこの危機を乗りこえていくことが大事だろう。

日本も今中小企業強化法という中小企業に資本を融資をするために金融機関に資本を注入する法案を審議しておりますけれども、残念ながら民主党が採決については応じられない。
日本は年末の資金ぐりが極めて大事でありますけれども、年末どうなってもいいかのような、国会の対応をしているというのは大変にこれは私は残念なことであり、万が一この法案が年末に間に合わなければ、今現在日本では倒産件数がジリジリと増えてきている状況でありますけれども、この影響は非常に大きいということも言わなければならない。大変心配をしているわけでございます。

日本中がこれから世界と共に、やるべきことをやっていく。この際、本当に政争なんてのものは二の次三の次で、国民の暮らし、世界の人々の暮らし、日本の経済、世界の経済というものをどうやって立て直していくか。日本には先ほど申し上げたように、経験と知恵と、そしてたまたま資金と、そして麻生さんのあの個性と、ありますから、これらを思いっきり発揮をして、そして日本と世界のために貢献をしていきたい、これが私の気持ちであります。ご清聴ありがとうございました。


<関連>
20081114@ワシントン緊急首脳会合G20
http://d.hatena.ne.jp/beber/20101002#p1